「……なァ。」
「あん?」
 船は既に、新たな島へと進みだしている。結局、「風邪引くぞ」と碌々食事を味わう暇もなく船へ戻り、次の日の朝早く、二度と見ることは
無いであろうあの島を離れてしまった。
 サンジは朝食後の煙草にシュッと火を点け、のんびりと煙を吐き出してから先を続けた。
「昨日、お前どうやってあの店まで行ったんだ?」
「んー? っと……。」
 何で今更、と思ったが、コイツの、サンジの突発的な言動にはもう慣れた。ゾロは、思い出しながらゆっくりと言葉を重ねる。
「船でて、右のほうに行って……。見たことねぇ店があったから、とりあえずそこの奴に道聞いたんだけど、知らねぇっつうから適当に歩いて……、
5、6人ぐらい捕まえたら、知ってるっつうやつに会ったんだけど、そん時はもう目と鼻の先だったかな。」
 黙って紫煙を燻らせながら聞いていたサンジだったが、急に肩を震わせて、
「くっははは……! んじゃお前、ほとんど勘で着いたんだ?」
 くっくっく……と、あまりいつまでも笑っているので、さしものゾロも反論した。
「んだよ。着いたんだからいーじゃねぇか。」
「いや、……。」
 どうにか笑いを押さえ、しかし目の端に笑い涙を浮かべながら、サンジはにやにやと口を開いた。
「それってさ、やっぱり……。」
 指先の煙草を揉み消しつつ、座り込んで憮然とした視線を投げるゾロに目の高さを合わせて。
「アイの力、って奴じゃねぇ?」
「……ばーか。」
 最後にはゾロも苦笑して、サンジの唇を受け容れた。




Fin.